結論から書く。セリアで売っている110円の「プチ土鍋」は、ガッツリ料理を作るための「鍋」だと思って買うと、おそらく数日でゴミ箱行きになる。しかし、これを「直火もいける小鉢」あるいは「一人分のつまみ製造機」と定義し直せば、110円という価格がバグに思えるほどの名品に化ける。
俺がこの鍋を近所のセリアで見つけた時、最初に思ったのは「これで110円? 割れるだろ、普通に」という疑念だった。ダイソーなら300円や500円で売っていそうなサイズ感だが、セリアは頑なに110円を貫いている。その「安さの限界」を確かめたくて、グレーのマットな質感のやつを一つ、カゴに入れた。
それから1ヶ月。ほぼ毎日、何かしらの形で火にかけ、洗い、時には焦がした。その中で見えてきたのは、カタログスペックには載っていない、あまりにもリアルな「100均鍋の限界」と「意外なポテンシャル」だった。
セリアの棚で感じた「ダイソーとの決定的な違い」
そもそも、なぜセリアの鍋なのか。100均好きなら分かると思うが、ダイソーの鍋は「実用性」に全振りしている。黒くて、ゴツくて、サイズもそこそこ。対してセリアの鍋は、明らかに「見た目」から入っている。

俺が買ったのは、直径12cm程度の小ぶりな土鍋。色はベージュとグレーの2色展開で、どちらも流行りの韓国インテリアっぽい、くすんだ色味だ。表面はツルツルした釉薬ではなく、少しザラつきのあるマット仕上げ。これが110円の棚に並んでいると、正直、他のプラスチック製品が安っぽく見えるほどにオーラがある。
だが、手に取った瞬間に「あ、これ薄いな」と感じたのも事実だ。本格的な土鍋のような重厚感はない。むしろ、ちょっと厚手の陶器の器に近い。この「薄さ」が、後の調理でメリットとデメリットの両方として牙を剥くことになる。
儀式としての「目止め」:110円にどこまで手間をかけるか
土鍋を買ったら避けて通れないのが「目止め」だ。米のとぎ汁や残り飯を煮て、土の粒子をデンプンで埋める作業。正直、110円の鍋にそんな丁寧な真似をするのは馬鹿らしいとも思った。そのまま火にかけて、割れたら「やっぱりな」と笑って捨てればいい。

でも、なんとなく気になって、冷蔵庫にあった冷やご飯をひとさじ入れて、弱火でコトコト煮てみた。
ここで最初の試練が訪れる。セリアの鍋、小さすぎてコンロの五徳(ごとく)に安定して乗らないのだ。俺の家の一般的な3口ガスコンロだと、中心のセンサーが鍋を押し上げてしまい、手を離すとガタンと傾く。結局、焼き網を一枚挟んでその上に乗せることになった。
10分ほど粥を炊いていると、部屋の中に土の匂いというか、少し焦げたような独特の香りが漂い始めた。「あ、これ本当に土でできてるんだな」と、当たり前のことに感動する。粥を捨てて洗い流すと、カサカサだった表面が少ししっとりした。これで、戦う準備は整った。
湯豆腐で知った「サイズ感」の絶望と希望
最初に作ったのは、基本中の基本、湯豆腐だ。 スーパーで3個パック38円とかで売っている、あの小さな豆腐を1つ。それと、申し訳程度のネギと昆布。

驚いた。豆腐を1丁(150g)入れただけで、鍋がほぼ満杯になったのだ。 「これ、水入れるスペースなくないか?」
無理やり水を注ぎ、火にかける。土鍋の特性上、沸騰するまでは時間がかかるが、一度熱くなると一気にくる。そして、案の定、吹きこぼれた。
この鍋、縁(ふち)の返りがほとんどないので、沸騰した瞬間に汁が外へダイレクトに逃げる。コンロが白く汚れるのを見ながら、俺は悟った。これは「煮込み料理」を作るための道具じゃない。
しかし、火を止めてそのまま食卓へ運び、ポン酢を垂らして食べた一口目の豆腐は、驚くほど熱々だった。普通の皿に移し替えたらすぐに冷めてしまう豆腐が、最後までハフハフ言いながら食べられる。この「蓄熱性」こそが、110円を支払う最大の価値だと気づいた瞬間だった。
1ヶ月使い倒して分かった、具体的な「弱点」
毎日使っていると、愛着よりも先に「イラッ」とするポイントが溜まってくる。これから買う人のために、包み隠さず書いておく。

1. 蓋のガタつきがすごい
110円だから文句は言えないが、本体と蓋の噛み合わせがかなり甘い。火にかけている間、ずっと「カタカタ、カタカタ」と落ち着きのない音がする。密閉性なんて言葉はこの鍋の辞書にはない。蒸し料理をしようと思っても、隙間からどんどん蒸気が逃げていく。
2. 取っ手が小さすぎて、もはや「飾り」
デザインを優先したせいか、両脇の取っ手が極端に小さい。指をかけるスペースがほとんどないので、ミトン越しに掴むのが至難の業だ。一度、滑らせてコンロの上でひっくり返しそうになった。この鍋を扱うなら、指先だけのシリコン鍋つかみが必須だと思う。
3. 底の焦げ付きが取れにくい
マットな質感の弊害か、一度底を焦がすと、重曹を使って煮洗いしてもなかなか綺麗にならない。俺は一度、醤油ベースのタレで鶏肉を焼こうとして大失敗した。土鍋というよりは、やはり「汁気の多いものを温める」用途に特化させるべきだ。
セリア 鍋 ゼのグッズのコードは共通の代替品をAmazonと楽天で探す
セリアの店頭で目当てのアイテムが見当たらない場合でも、ネット通販なら類似の機能を持つ製品をすぐに見つけられる。ここでは、サイズ感や用途が近く、代用として使い勝手の良い3つの製品をまとめた。
| 商品名 | 特徴 |
|---|---|
| パール金属 鍋 卓上鍋 | 汚れが落ちやすいフッ素加工 |
| 和平フレイズ(Wahei freiz) 豊味庵 両手鍋 アルミ鍋 | 軽くて熱伝導が良い |
| 土鍋 6号 8号 洋風土鍋 | 保温性に優れた陶磁器製 |
パール金属 鍋 卓上鍋
一人暮らしの自炊や、食卓で温かい料理をそのまま楽しむのに適したコンパクトなサイズだ。内面にフッ素樹脂加工が施されているため、食材がこびりつきにくく、調理後の洗浄もスムーズに行える。
和平フレイズ(Wahei freiz) 豊味庵 両手鍋 アルミ鍋
非常に軽量なアルミ製で、腕への負担を抑えながら日常的に使い回せるのが魅力だ。熱の回りが早いため、お湯を素早く沸かしたい時や、インスタントラーメンなどの手軽な調理を済ませたい場面で重宝する。
土鍋 6号 8号 洋風土鍋
厚みのある陶器が熱を蓄え、火を止めた後も料理の温度を長く保ってくれる。和風の鍋料理に限らず、モダンなデザインのものを選べばポトフやシチューといった洋風の煮込み料理を食卓へ出す際にも馴染む。
最高の使い道は「アヒージョ」と「蒸し野菜」だった
試行錯誤の末、俺が行き着いたセリア鍋の正解は、アヒージョだ。
オリーブオイルを底から2cmくらい注ぎ、ニンニクと鷹の爪、それに冷凍のシーフードミックスを放り込む。弱火でじっくり加熱すると、オイルがパチパチと良い音を立て始める。 この鍋のサイズは、市販のアヒージョの素1袋分にシンデレラフィットする。オイルの量も少なくて済むし、何より見た目がバル(居酒屋)っぽくてテンションが上がる。
もう一つは、ブロッコリーの蒸し焼き。 少量の水と塩、それにオリーブオイルを回しかけて、蓋をして数分。蓋の隙間から蒸気が漏れるおかげで、逆に水っぽくならず、ホクホクに仕上がる。そのままマヨネーズを添えて食卓に出せば、立派な副菜の完成だ。
「料理を作って、別の皿に盛る」という工程を一つ飛ばせる。この「ズボラへの貢献度」こそが、この鍋を使い続けている本当の理由かもしれない。
